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ギャグとホラーは似ている?!恐怖は日常と地続き?!編集者が考える「恐怖」の哲学とは GANMA!の編集者にホラーについて考察してもらった!

夏といえばホラーである。
GANMA!では数多くのホラーマンガを掲載しているが、その作り手である編集者にホラーについて語ってもらった。
本記事は、日々真剣に「恐怖」と向き合う編集者の「恐怖の哲学」をお伺いするインタビュー記事である

登場人物

編集者:A
母方が仏教、父方が神道に通ずるルーツを持つ生粋の「怪異」のサラブレッド
GANMA!内でのホラーの代表作は
『井上オンラインの ガチで怖いことやってみた』
『怪談ルゥプ』『77億の災厄』など
以下、A氏
編集者:K澤
ホラーとギャグ作品を多く担当する。座右の銘は「ホラーとギャグは紙一重」
GANMA!内でのホラーの代表作は
『神様ですげェむ』
『人形峠』など
以下、K澤氏
編集者:H川
稲川淳二をアイドルとして敬愛する生粋のホラー好き
GANMA!内でのホラーの代表作は
『幽道少女 -タオガール-』
『かなたこなた』など
以下、H川氏
ライター:たなか
ホラー漫画が好きだがめちゃめちゃな怖がり 気づいたら何故か社内でライターになっていた
以下、たなか

※なおGANMA!を代表するホラーマンガの「外れたみんなの頭のネジ」の担当編集であるT本氏は「私が魅せたいのは恐怖でなく狂気」という強い意志のもと今回は不参加となります。
※またホラー企画第2段として洋介犬先生との対談記事を作成しております!お楽しみに!

■外れたみんなの頭のネジ

外れたみんなの頭のネジ
主人公・ミサキは街に住んでいるみんなが少しずつ狂っていることに気が付いている。そして彼女にしか見えない謎の悪魔・べへりん。徐々に侵食してくる恐怖!一体何を信じて良いのか―... ホラー界の奇才が紡ぐサイコ×マッドネスコミック!!

編集者が語る!「恐怖」とは一体何なのか

たなか:
皆さんは数々のホラーマンガに携わってきたと思われますが、つまるところ「恐怖」とは一体何なのでしょうか?

A氏の恐怖の世界
その人の世界が崩れる時、その時人は恐怖の世界の扉のドアノブに手をかけている

A氏:
そうですね…僕が考える「恐怖」は、「常識が崩れる瞬間」ですかね
その人が思っている世界の理を急に崩されるのが「恐怖」の根源だと思っています。

たなか:
ほう…「常識が崩れる瞬間」というと、あまり怖いというイメージは無いのですが…単なるびっくりに近いような気がします。

A氏:
例えばですね…一人暮らししている家の少し空いたドアの隙間。「その向こうにはだれも居ない」というのが常識ですよね。
鍵もかかっている。窓も締まっている。すべての戸締まりはしっかりされている。でも、そこから誰か覗いている。
これが家には誰も居ない、という常識が崩れた瞬間のホラーです。
絶対ありえない!と思ったことが起きてしまった時に、その人の中の確定した世界が壊れるとおもっていて。それが恐怖に繋がると思っています。

たなか:
ひえ…!想像するだけで怖くなってきました。こころなしか私の後ろにあるドアがすごく気になる…!

A氏:
そう!まさにその感情が僕が届けたいもので、ホラーマンガを読んだ読者が日常生活を送るときに「もしかしたらドアの向こうに誰かいるかもしれない」と少しでも脳裏によぎってくれたら最高だなと思っています。マンガを通して、読者の些細な日常にも支障を与えたいですね!
読者の日常が壊れちゃえばいい!!!(破壊的笑顔)

たなか:
じゃ…邪悪だ…!A氏さんの考えるホラーは読者の日常と地続きでなおかつ日常(常識)を破壊してくるから怖い、ということですね…

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↑このインタビューを受けているとき、後ろのドアからやたらと視線を感じた。A氏の話を聞いた私の日常が壊れてしまったのかもしれない…

K澤氏の恐怖の世界
ギャグとホラーは紙一重!
感じさせたい明確な感情があるからこそ洗練されていくジャンルである

K澤氏:
私もA氏さんの考える恐怖と近いかもしれません。ホラーマンガを通して読者の心に爪痕を残したい!!!

たなか:
(この編集部物騒だな…)ほう…では、お次はK澤氏の考える恐怖についてお聞かせください。

K澤氏:
私ギャグとホラーはマンガの中でも変わっていると思っていて、他者無しではこのジャンル生まれないと思っているんですよね。
怖がらせると笑わせるという明確な目的がないと生まれないジャンルなので。そういう意味ではこの2つのジャンルはエンタメに特化していると思っていて、実際担当作品もその2つが多いです。
この2ジャンルの共通点は、現実を忘れて没頭させてあげられることなのですよね。「面白い」や「怖い」といった感情で読者を支配できる。
ホラーマンガの場合だと読んでいて、没頭してふと現実の世界に帰ってきた時にはマンガで経験した「恐怖」が日常生活に潜んでいる。いわば読者の常識をマンガによって上書きした状態にするといった感じですかね。そういうのがホラーの醍醐味であり、A氏さんの考え方にも共通する部分です。
なので私も読者の日常が壊れちゃえばいい!!!と思っています!
(破壊的笑顔)

たなか:
やっぱり日常を壊したがっている!やはり、マンガを通して読者の生活に影響を与えられるというのは作り手冥利に尽きるということですかね。

K澤氏:
とはいえ、マンガという媒体だと視覚からの情報だけという限界はきちゃうので、できることならホラーマンガを読んでいる読者の本に出張して物語が盛り上がったタイミングでドアを「ドンドンドン!!!!!!!」ってやりたいです。

A氏:
最高ですね。僕もやりたいです。

K澤氏:
物騒なことを沢山言いましたが、詰まるところはやっぱり現実を忘れて、それだけのことを考えられる時間を提供してあげられるといいのかなと思います。

H川氏の恐怖の世界
「恐怖」はもはや芸!?
様々なコンセプトを楽しんでいくエンタメが「ホラー」ジャンルである!

H川氏:
私はもう「恐怖」は行き過ぎちゃってて、「恐怖」とはなにか、と言われると芸として楽しんじゃってるというところがありますね。

たなか:
恐怖を芸として…!?

H川氏:
例をあげるとすると、ホラーマンガ以外に恐怖を楽しむコンテンツとしては他に怪談などがあるじゃないですか。あれはもう一種の「芸」なんですよね。
人々を楽しませるために創意工夫されている。怪談系YouTuberやホラーまとめ記事や映画でも同じなのですが、一種の芸なのでその時の流行があるんですよね。

たなか:
ほう…「恐怖の種類」に流行りすたりがあると…

H川氏:
もちろんA氏が言ったような日常の延長線上の恐怖、みたいなのも基本パターンとしてある中で、「ただそこにいる」恐怖みたいなのが一時期はやっていたように感じます。
訳を説明しない、正体がわからない、目的もなく、ただそこにいる恐怖とでもいいますか。
日本の怪談なんかは、幽霊にも意図や解釈がちゃんとある。例えば、悲惨な事件があったから人を呪い殺したい〜だとか。ですが海外などのホラーは一概にそうではなく、ただ迫ってくる、そこに理由なんてない、といったようなものが多くあるのですよね。こういった一概に「恐怖」といってもパターン化されていて様々な怖さの種類がある、というのが私が「恐怖」を芸だと思う理由です。
マンガも同じで恐怖を伝える方法は沢山あって芸化しているので、恐怖に関してはそれぞれの芸としての「コンセプト」を楽しむべきなんじゃないか、ととらえていますね。

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↑ただそこにいるだけの恐怖
正体がわからない、目的もなく、ただそこにいる恐怖というのは、対象の存在が不明瞭すぎるがゆえに対処法がわからないのも恐ろしい理由なのかもしれない

ホラーは「みんなちがっていみんないい」が確立されているジャンル

たなか:
そう考えるとホラーは「みんな違ってみんないい」が確立されているジャンルかもしれないですね。

K澤氏:
多様性がすごいですもんね。ゾンビものだったり、悪霊系だったり、クリーチャー系だったり、サメだったり(笑)

A氏:
サメはもうギャグですけどね(笑)
まあギャグとホラーは紙一重というように、多様性みたいなものがそれぞれ尊重されていて、ルール化みたいなものがなかったからこそこんなに様々な「芸」が生まれたジャンルなのかもしれないです。

ホラーの様式美と進化

A氏:
最近僕がみて面白かった新しい「芸」を持ったホラーは映画の『来る』ですね。

長らく恐怖を描くときは「恐怖の根源」をしっかり描写することが必要とされていたんですよね。貞子が怖い、ゾンビが怖いといったような…。
ですが、『来る』という映画ではその「恐怖の根源」を一切描写しなかったんですよね。

たなか:
え、それで本当にちゃんと怖かったんですか!?

A氏:
怖かったです。何かが来てるんです。でも正体は一切わからない。
正体のわからないなにかが着実に自分に迫って来ている、という「新しい恐怖」が映画『来る』にはありましたね。

たなか:
それは…確かにめっちゃ怖いですね…。
H川氏がおっしゃった「正体がわからない」恐怖が日本版にいい感じに輸入されてアレンジされたような映画だったということでしょうか?

A氏:
そうですね。そういった新しいコンセプトへの挑戦を映画『来る』からは感じました。

H川氏:
そういった意味では、ホラーは常に新しい表現を探しているジャンルと言えるかもしれませんね。

K澤氏:
意欲的なジャンルですよね〜ホラーって。
「怖い」という感情って絶対慣れみたいなのがでちゃうので、その慣れの様式美を楽しむ文化もありつつ、新しいものを常に開拓しているんだと思います。

たなか:
カップルで性行為に及んだ者から死ぬ、というのはホラーの鉄板ネタですよね。そういった決まりごとを完璧に追求していくという美学と、常に新しい発見を求め続ける探究心みたいなものがホラーというジャンルには詰まっていると言えそうですね。

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↑なんとなく怪奇現象にあいそうな大学生グループの図
何故かこういうグループにかぎっていわくつきの山奥を訪れたりする。
こういった決まりごとをなぞっていくのもホラーの楽しみ方なのかもしれない

突撃!編集者の実体験ホラー!!

たなか:
そんなホラー好きの皆さんは、実際にホラー体験をしたことは無いんですか?

H川氏:
残念ながら私には全く無いんですよね。こんなにホラー好きを公言しているにも関わらず…。あまりにも「恐怖」を芸として捉えているので、霊的なものの方から「こいつは駄目だ!」みたいな感じで避けられているんだと思っています。

K澤氏:
残念ながら私も同じくです。ほんと体験したいんですけどね…もし遭遇したらTwitterで言いまくるのに…

A氏:
僕は実はあって、昔
『井上オンラインの ガチで怖いことやってみた』
という作品を担当していたことがあるんですよね。

井上オンラインの ガチで怖いことやってみた
世にある「怖いこと」に、体一つで挑んでいく! ガチで挑戦する、異色なホラールポ漫画!ここに爆誕! 果たして井上オンラインは、無事に霊と出会うことが出来るのか…!?

そこにも描いたんですけど、子供時代のある日、疲れてリビングで寝ていたら深夜に目が覚めて…2階の自室で寝なおそうとしたとき、母親の声で風呂場から僕を呼ぶ声が聞こえて…
ですが、そんな夜中に母親が風呂場にいるなんてありえないんですよね。その時は怖くて走って両親と一緒に寝たのですが…

たなか:
ガチのホラー話じゃないですか!

A氏:
その後、僕は覚えてないんですけどまた深夜に起き出してじっと風呂場の風呂桶を眺めてたらしいです。母親が焦って引き戻したらしいんですけど。

たなか:
明らかに霊的なものに呼ばれている…

編集者おすすめ!GANMA!のホラーマンガ

たなか:
最後にGANMA!には沢山のホラーマンガがありますのでここで集まっていただいた編集者さんのおすすめホラー作品をお伺いしたいと思います。

K澤氏:
私からは、担当作になってしまうのですが、人形峠神様ですげェむですかね。

■人形峠

人形峠
学校行事の農村体験で山奥の村に訪れた高校生たち。 農家でのホームステイを通して田舎での生活を学んでいくことになる。 しかし、そこは存在しない村だった・・・? 閉鎖された村で起こる数々の不可解な出来事に戦慄が走る!高校生たちの運命は?

■神様ですげェむ

神様ですげェむ
目が覚めると、そこは見知らぬ森だった……。掲載ギリギリの“最恐デスゲーム”が今、始まる。

人形峠は伝統的なジャパニーズホラー感を楽しめる作品で、孤立された閉鎖的な村やおかしくなった村人、村だけに伝わる儀式等といったいみんな大好きな要素が詰まっているおきまり楽しめる作品です。
逆に神様ですげェむは新しい魅せ方を模索してギャグ要素もいれつつ、なるべく読者の予想を裏切るような形で作っています。まさに上記であったような新しい表現を探している作品ですね。
1話は必ず読者が驚くように工夫してあるので、是非1話だけでも読んでみてほしいです。

H川氏:
私は幽道少女 -タオガール-かなたこなたですかね。

■幽道少女 -タオガール-

幽道少女 -タオガール-
父親の転勤により、台湾の「シンメイ団地」に引っ越した女子高生の竹元直海。しかしその団地には「西棟に入ってはならない」という絶対的な掟が存在した。しばらくして転校先に馴染み始めた直海だったが、偶然西棟エリアに鍵を落としてしまい―…!?

かなたこなた

 かなたこなた
《その箱の中には“■■■”が入っている―それは絶望か、希望なのか》 関西某市、豊かな自然を抱えながら再開発に揺れる小さな街。 ここに暮らすカナタとコナタの姉妹は、目に見えないものを視る力を持っていた。ある日、妹は姉に反発し「立入禁止区域」へと足を踏み入れてしまう。そこで見つけた“あるモノ”を持ち帰ろうとするのだが―…?

幽道少女 -タオガール-は異文化×民族系×バトルを基調とした作品で、戦っていく系なのでしっとりジャパニーズホラーとはちょっと毛色が違うかもしれません。台湾の文化を作品に取り込んでいるので、そういった系の作品が好きな方にはかなり刺さるのではないかと…!
かなたこなたも民俗学的なものをモチーフにしていて、怖い話でよく上がる「コトリバコ」なんかがテーマのひとつになっています。
上記であげられた人形峠が恐怖を煽ってくる作品だとしたら、かなたこなたは悲劇を魅せるお話なので色々な演出を楽しんでいただければと思います。

A氏:
僕は基本みんないいな…と思っているので悩むのですが、意欲作だな、という意味では彼女に呪われてるけど幸せなのでOKです☆ですかね。

■彼女に呪われてるけど幸せなのでOKです☆

彼女に呪われてるけど幸せなのでOKです☆
女子に優しくがモットーの飯田春成17歳。毎朝クラスの女子全員のカバンを持って登校するような彼は、周囲から皮肉を込めて「究極ジェントルマン飯田」と呼ばれていた。ある日、不思議な雰囲気を持つ美少女、影浦サリと出会うが、サリの身体から呪いのような怪物が出ていることに気づく。急いで逃げようとする飯田だったが、なにやら様子がおかしくて…?ヒロインに呪われる!?新感覚ホラーラブコメ!!

やっぱり面白いんですよね。基本はギャグ軸なんですけど、背景にいる化け物は本当にちゃんと怖い。以前にも似たような話が出ていましたが、ホラーっていうのは常識を崩していくというか、驚きを与えるという意味ではギャグと親しいんですよね。常識と違うことをして、笑わせたらギャグ、怖がらせたらホラーなんですよね。彼女に呪われてるけど幸せなのでOKです☆はその両方をつめこんできている作品なんですよね。ギャグとホラーの垣根をうまく超えてきた作品だなと思います。

たなか:
ホラーに様々なみせかたがあるように、GANMA!作品のホラーも日々進化しているのですね…!

GANMA!では連載中の作品は最新話まで待ち時間無しで全話無料!

本記事で紹介したホラーマンガはもちろんのこと
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今年の夏はGANMA!のホラーマンガで背筋の凍る夏を楽しんでみてはいかがでしょうか?

みんなにも読んでほしいですか?

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